GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 8
2025 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL
会期:2025年11月1日(土)2日(日)
場所:モビリティリゾートもてぎ(栃木県)
観客:予選:18,000人 / 決勝:32,000人
獲得ポイント:〈ドライバー〉8Pts / 〈チーム〉11Pts
シリーズ順位(※):〈ドライバー〉谷口・片岡 5位(74.5Pts), 中山・奥本24位(16Pts) /〈 チーム〉3位(104.5Pts)
※GT300のシリーズ得点は高得点順に最大7戦分が合算される。
2025年も残すところ2ヶ月を切った11月1日2日の週末、木々が赤く染まりだした栃木県のモビリティリゾートもてぎで、SUPER GT 2025シーズンはいよいよ最終戦を迎えた。
この最終戦に、GOODSMILE RACING & TeamUKYOは、ドライバーランキング4位、チームランキング1位と、数年ぶりにチャンピオンを狙える位置で臨んだ。
しかしチャンピオンを狙えるとは言え、ドライバータイトルを獲得するには優勝かそれに近い高位でレースを終えて、且つライバルチームが上位でフィニッシュしないなど幾つかの条件をクリアしなくてはならず、非常に難易度の高いチャレンジである。更に1位のチームランキングも、2位と0.5ポイント、3位と1ポイントしか差がない為、ライバルより確実に前でゴールしないと1位を維持できないというシビアな状況だった。
今大会のMercedes-AMG GT3のBoP(性能調整)は前戦と変わらず65kgを積み、合計重量1350kgと、全参戦車両のうち最大重量となった。またエンジン出力を制限するエアリストリクターはφ34.5mm×2個を装着する。そしてシーズン8戦目の今大会は、全車がサクセスウェイトを降ろして、ハンデなしで実力をぶつけ合うガチンコ勝負だ。この勝負を制し、2017年以来のチャンピオントロフィーを獲得して凱旋する事を目指し、チームは決勝の地に赴いた。
11月1日(土)【公式練習、公式予選】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度
GT300 Q1開始時:22℃/28℃
GT300 Q2開始時:22℃/27℃
終了時23℃/28℃
前日から降っていた雨は朝までに止んでほとんど雲のない好天の土曜日となったが、夜通し降った雨のせいで朝一番に開催されたFIA-F4の走行はウェットコンディションとなっていた。
午前9時10分、SUPER GT最終戦の公式練習がスタートした。路面はレコードラインこそ乾いているが、ところどころにまだ濡れた箇所が残るような状態。
4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは片岡選手が搭乗し、数分間ピットで待機した後、路面コンディションが整ったところでコースへと向かった。コースに入った片岡選手は持ち込みセッティングとタイヤの確認を進めながら、まずは5周目に1分47秒331を出して3番手に着けると、その後ピットインを繰り返してバランス調整を進めた。
12周を走ったところで谷口選手に交代、そこからGT500との混走時間やFCYテストを挟んで周回を重ね、ロングラン時のタイヤの状況確認を進めた。
午前10時50分からのGT300専有時間にはNEWタイヤ装着して谷口選手がコースへ向かったが、これは決勝レース用のタイヤの皮むきを行うことが目的だったため、予選シミュレーションはせずにアウトインでピットへと戻ってきた。
セッション中のベストタイムは片岡選手が序盤に記録した1分47秒331で、3番手という結果となった。 トップは唯一1分46秒台を記録した61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)で、2番手に0号車(VENTENY Lamborghini GT3)が続いた。
午後2時、予選Q1開始。
GT300の予選Q1は今大会もチームランキングを基に2組に分けられ、ランキングトップの4号車グッドスマイル 初音ミク AMGはA組で出走することになった。チームはQ1のアタックドライバーに谷口選手を指名した。
セッション開始と共にA組の14台のうち10台のマシンがコースへと向かい、タイムアタックへ向けてウォームアップを進めた。少し間を開けて残りの4台、6号車(UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI)、56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)、2号車(HYPER WATER INGING GR86 GT)、777号車(D’station Vantage GT3)もコースへと向かった。
まずは87号車(METALIVE S Lamborghini GT3)が4周目に1分47秒491を出してトップに立つが、谷口選手は1分47秒291を出してすぐに上回る。しかしこれも9号車(PACIFIC アイドルマスター NAC AMG)、666号車(seven × seven PORSCHE GT3R)が次々に更新していく。そして61号車が1分46秒130と、それまでのトップタイムを大きく上回ってトップに立った。谷口選手は5周目のアタックでもベストタイムを更新し、1分46秒885で3番手となってQ2進出を決めた。
GT300Q1B組とGT500Q1を経て、午後2時53分から予選Q2が始まった。 Q2のアタックドライバーは片岡選手だ。
シグナルがグリーンになると、Q2進出マシン全18台中、4号車を含む11台がコースへと向かった。少し間を開けて87号車、11号車(GAINER TANAX Z)、5号車(マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)、56号車、52号車(Green Brave GR Supra GT)、2号車、最後に777号車がコースへ入った。
まずは18号車(UPGARAGE AMG GT3)が4周目に1分46秒411のターゲットタイムを出し、片岡選手が1分46秒466でその時点の2番手タイムで続いた。そこに61号車が怒涛のアタックでトップタイムを1秒以上上回る1分45秒192を出しトップに立ち、そのままポールポジションを獲得した。その後5号車が2番手、52号車が3番手、56号車が4番手タイムとなるタイムを出して、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは6番手に後退して予選を終えた。
チャンピオン争いをしているライバルたちは、56号車が4番手と前方に位置し、7号車(CARGUY FERRARI 296 GT3)は10番手、65号車(LEON PYRAMID AMG)は14番手と後方からのスタートとなった。
11月2日(日)【決勝】
天候:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度 スタート時(13:00)19℃/24℃
序盤(13:30)20℃/25℃
中盤(14:00)20℃/24℃
終盤(14:30)19℃/24℃
ゴール時(15:00)19℃/23℃
最終戦の決勝日。サーキット上空は概ね晴れて日差しがあるものの、薄い雲におおわれており、事前の予報では土曜日よりも暑くなるはずが、むしろ涼しくなっていた。
午後12時40分、決勝前のウォームアップ走行が始まると、スタートドライバーの片岡選手が乗り込み決勝用のセットの確認をしながら周回を重ねた。前日の公式練習でもタイヤのピックアップが頻繁に起こりラップタイムを落としがちだったが、チームはその原因が路面温度の低さにあると見ており、決勝レースに向けて気温が上昇することを願っていた。
タイヤのピックアップはコース上に落ちているタイヤカスを拾うことで発生することが多いが、今回は自車のタイヤから削れたものが飛ばずに表面に残ってしまうことで発生していた。
午後1時、気温19℃、路面温度24℃というコンディションの中、栃木県警先導のパレードラップが始まった。先導車に続いてGT500、GT300のマシンが動きだしたが、その途端に25号車(LEON PYRAMID AMG)がマシントラブルを起こして2コーナーで停止するトラブルが発生、あわやSCスタートになるかと心配されたが、幸い先導車両が再び現場に差し掛かる前に車両回収が済み、無事にレーススタートを迎えることができた。
スタート1周目、1コーナーの突っ込みで片岡選手はアウト側から18号車に並び前に出たが、同時に18号車のインからは666号車が上がってきていた。4号車はその2台に押し出される形で2コーナーで外側のラインを取らされ、そのまま666号車に前に出られてしまった。
しかし、続く3コーナーで666号車を抜き返し5番手に順位を上げると、そのまま56号車とのバトルが始まった。AMGの得意なブレーキング、コーナーリングでは間を詰めていくが、ターボエンジンを搭載するGT-Rにストレートで離されてしまう。これを何度も繰り返す間、後ろ走る666号車は常に4号車のテールに着いてオーバーテイクのチャンスを窺っていた為、片岡選手は守りにも神経を張り巡らせる事になり、前の56号車に徐々にギャップを作られてしまった。
7周目、90度コーナーで6号車が777号車を後ろから押してしまい2台共にコースオフ、777号車は自力でグラベルから抜けたが、6号車は脱出不能となってしまった。これにより回収作業の為にFCYが出された。このFCYは1周だけで解除された。
12周目、前にいた56号車は5号車を抜き3番手にあがり、4号車の前は5号車へと変わった。
16周目、4号車は引き続き666号車からのアタックを防ぎながら走行していたが、さらに後方からポジションを上げてきた7号車が666号車に追いつき、3台での5番手争いが始まった。
19周を超えるとピットに向かうチームが現れ始めた。
20周目、前を走っていた5号車がピットイン、4号車は4番手にあがる。4号車を先頭に666号車、7号車と3台のバトルは続いていたが、7号車が666号車を抜いて5番手にあがっていた。
7号車の勢いは止まらず、21周目には4号車も抜かれてしまった。
23周目、チームは片岡選手をピットに呼び戻した。谷口選手へ交代し、給油とタイヤ4輪交換をおこなった。
この時、シリーズランキングトップの65号車は14番手と後方からスタートした後、着々とポジションを上げ、更に4号車よりも先にピットに入ってフロント2輪のみの交換でタイムロスを短くする作戦を取っていた。このため、4号車がピットアウトした際、かろうじて65号車の前でコースに復帰できたものの、アウトラップの5コーナーで65号車に先行を許すことになってしまった。
続く周に7号車もピット作業を終えると、ランキング上位勢は、56号車が5番手、65号車が6番手、7号車が7番手、4号車が8番手と、4号車がチャンピオンを獲得する為に後ろに従えるべき車両全てが前にいる状態となってしまった。
チャンピオン獲得のためにはこれらライバル全ての前に出なければならない。谷口選手は前の7号車を懸命に追ったが、ほぼ同じようなペースでギャップは縮まらなかった。しかし、45周を過ぎガソリンが軽くなるにつれ、少しずつ谷口選手のペースの方が速くなり、徐々に近づいていった。 47周目にはギャップが1秒を切り、抜くタイミングを伺い始めた。
53周目、GT500車両がバトル中に接触し、コース上にパーツが飛んだ為にFCYが出された。
54周目、FCYが解除されると谷口選手は一気に7号車に詰め寄り、90度コーナーで勢いよく追いついたが、しかしここで減速し切れず7号車に追突してしまった。幸い2台ともレースを続けることができたが、4号車はフロントのエアロに大きなダメージを受け、その影響かペースが落ち、このあとも7号車を追い続けるも、再びオーバーテイクのチャンスを得ることはできなかった。
そして58周目、最終コーナーを立ち上がってきたところで、ファイナルラップのGT500トップ車両に抜かれた事で、前を走る7号車より1周先に8位確定のチェッカーを受けることになった。この結果8ポイントを獲得したが、ライバルの65号車、56号車、7号車は全て4号車の前でゴールしていた為、残念ながらシリーズチャンピオンを獲得する事はできずにシーズンを終えた。2025年シーズンのシリーズチャンピオンは、同じAMGを使用する65号車が2018年以来7年ぶりに獲得した。
■チーム関係者コメント

今日のレースは、持込のタイヤが コンディションとうまくマッチせず、ドライバーたちに攻めるレースをさせてあげることができなかった。非常に申し訳なく、残念に思っています。
とはいえ、マシンのポテンシャルは高いですし、タイヤもうまくはまればマッチするということも、今年1年かけて見えてきました。決して手応えがなく終わったシーズンでもありませんし、今回のレースも戦略次第でもう少し上の順位にも行けたかなと思います。
今年は学ぶことが多い1年でした。この学びをつなげられるように、今後の活動についても考えていきたいと思います。
今シーズンもたくさんの応援をいただき、ありがとうございました。

2025シーズンが終わりました。たくさんの応援、ご支援に感謝申し上げます。
今年は惜しくもチャンピオンになる事は出来ませんでした。決勝の日の気温が低く、レースペースがちょっと足りませんでした。そんな状態では、色々な作戦を練っても、ドライバーが頑張っても、その物の持っているもの以上を引き出す事は出来ないので、逆転はやっぱり難しい状況でした。
スパに行かず、セパンに行っていたら…、とか、本当はもっとポイントは稼げてたので、チャンスはあったと思いますが、それはまた別の話なので後悔は無く、それでもチャンピオン争いに戻って来た事がとても大きな事で、チームの中で建設的な進歩があったからこそだと思っています。
来シーズンの参戦があればまた更に強くなる。課題を一つずつ、必ず克服してチャンピオンを獲得する!それしかありませんが、改めて、やっぱり競争や戦いは勝たないといけないと感じました。
この止まらない、諦めないチームを本当に誇りに思います。今シーズンもたくさんの応援、ありがとうございました。

今回最終戦に持ち込んだタイヤは、もう少し暖かいコンディションを狙ったものでした。しかし、予想より気温と路面温度が上がらない中での走行となり、公式練習を走ると(タイヤの)グレイニングやピックアップが起こる状態でした。タイヤがその状態だったのでセットアップもままならず、またタイヤの持込セット数も少ないため、アタックシミュレーションも出来ませんでした。
Q1を僕が任されたのですが、チャンピオンシップでは追いかける立場の我々はQ1敗退は許されないという、プレッシャーのかかる状況でした。その中、この週末初めて履くNEWタイヤでアタックをおこない、気合で突破し、無事に片岡にバトンを渡すことができました。
Q2は(片岡)本人が「決めきれなかった」というコメントもあり、6番手となりました。そして、日曜日。願いもむなしく、土曜よりさらに気温と路面温度が下がったコンディションでした。それでもスタート直後はなかなか激しいバトルの中、片岡がポジションを上げて5番手となりましたが、ピット作業などを終えてコースに戻り、レースが落ち着いたときには8番手になっていました。その後、前を追いかけるもののなかなか追いつかず、そのままチェッカーとなりました。今回の持込タイヤでは、逆転劇ができるような状況ではありませんでした。
今年はスパ24時間レースにチャレンジさせてもらったこともあり、1戦欠場したなか、最終戦までチャンピオン争いが出来る状況だったのは、代表の安藝さんはじめチームにとても感謝しています。チャンピオンを獲れず残念でしたが、今後につながる雰囲気があったのはよかったです。
一年間応援ありがとうございました。

チャンピオンのかかった最終戦なので色々な期待を持って挑みましたが、期待していた気温や路面温度にならなかったので苦戦しました。暑い時期のレースは絶好調だったのが、温度レンジの下がる第7戦オートポリスでは我々には少し難しくなっていましたが、もてぎもやはり低温に苦しむことになりました。予選はなんとかそれなりのパフォーマンスがだせましたが、決勝レースでは懸念していた低温による問題が発生してしまって、レースペースを思うように上げることが出来ませんでした。
レースが終わってみて、チャンピオンを争うライバル達に終始遅れを取っていたレース展開を振り返って見ると、まだもう少し力が及ばなかったのだなと感じます。ただ、今シーズンはこれまでの数年と比べればチャンピオンの権利を残して最終戦に挑めたわけで、このことはとてもポジティブに捉えています。






